• 更新日:2017年8月18日
  • 公開日:2016年12月16日


プライドで腹はふくれぬ!ならば内職だ!!


「武士は喰わねど高楊枝」なんて言葉があるように、貧乏でもプライドだけは高かった武士たち。でもプライドだけでは腹はふくれぬし、ましてや家族を養うことなんてできません。

物価が高騰しだした江戸時代中期以降、生活苦に喘いだ武士たち始めたのが内職。基本的に武士の内職は禁じられていたそうですが、下級武士の内職に限っては許されていたそうです。また、藩によっては黙認どころか内職を奨励していたところもありました

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さて、武士の内職というと真っ先に思い浮かぶのがこれではないでしょうか。



傘張りは武士の内職の定番
画像引用元:長崎大学附属図書館
傘張り

時代劇ドラマでも浪人者が傘張りの内職をしているシーンがよく登場するぞ。

実際に傘張りの仕事は武士の内職のド定番。

特に、現代の東京都港区青山にあった青山の鉄砲百人組の組屋敷では、組織的な傘張りの内職が行われていました。彼らの作る傘はとても評判がよく「青山傘」というブランドにまでなったとか。

そんなブランド傘を手がけていた青山の鉄砲百人組たち。

元をただせばその正体はーー




『影の軍団』に登場する服部半蔵(千葉真一)

甲賀の忍者です。

ちなみに写真は『影の軍団』に登場する服部半蔵千葉真一)なので伊賀忍者ですが、細かいことは気にしないでほしい。

「鉄砲百人組」は戦に備えての鉄砲集団なのですが、鉄砲を放つ代わりに傘を作っていたわけです。平和な江戸時代にあって、甲賀の忍者たちは優秀な傘職人軍団になっていたのです。

余談ですが、江戸時代の傘は現代に比べてとっても高価でした。

女性やセレブに人気の「蛇の目傘」は新品だと1本およそ2万円。「番傘」という一番リーズナブルな庶民向け傘でも1本5,000〜7,000円くらい。

なので人々は傘が破れても捨てることはなく、「古傘買い」というリサイクル業者に売りました。その古傘は、紙を張り替えて新しく再生されて売られるのですが、ここで活躍したのが傘張りを内職にした武士たちです。

限られた資源を大切し再利用が徹底的に行われたエコ都市・江戸の“縁の下の力持ち”として、下級武士たちは頑張っていたのです。

願掛けのため京の清水の舞台から飛び降りる女性(鈴木春信 画)
メリーポピンズばりに傘片手に飛んでいる少女。ちなみにこれは、願掛けのため京の清水の舞台から飛び降りているところ。こんな無茶して傘が壊れても大丈夫。内職の武士が張り直してくれます。(鈴木春信 画)
青山の鉄砲百人組が傘張りならば、牛込弁天町(現・新宿区弁天町)の鉄砲百人組は提灯張りの職人集団として有名でした。しかも、こちらも有名忍者軍団「根来(ねごろ)組」。忍者は手先が器用だったんでしょうかね。

武士にとって手習い(書道)は心得のひとつだったため、提灯の文字入れなどはお手の物だったようです。

提灯の絵付け作業をイメージして撮影した古写真
提灯の絵付け作業を撮影した古写真(被写体は内職している武士ではありませんので悪しからず)
甲賀、根来ときたら伊賀忍者だって何かやってたはず、と思いますよね。


はい。やってました内職。



江戸時代、千駄ヶ谷(現・渋谷区千駄ヶ谷)に組屋敷があった伊賀者たちは、どんな内職をしていたかと言いますとーー驚きのこちら。





伊賀忍者は鈴虫の養殖を内職にしていました
画像引用元:Find Travel
鈴虫の養殖



伊賀忍者、まさかの昆虫ブリーダーになる、の巻


鈴虫のほかコオロギも養殖していたほか、虫カゴの製作も行っていました。

飼育された虫たちは、虫売りに卸され市中や縁日などで販売されました。鳴き声の美しい鈴虫やコオロギはペットとして庶民に大人気となったのですが、その裏には伊賀忍者たちがいたとは驚きです。

江戸時代の虫売り(『夜商内六夏撰 虫売り』歌川豊国 画)
江戸時代の虫売り。オシャレな格子柄が虫屋の目印(『夜商内六夏撰 虫売り』歌川豊国 画)
江戸時代の人気ペットといえば金魚ブームの影にも武士の内職がありました。

江戸時代中期以降、それまで高級ペットだった金魚は国内での養殖が盛んに行われるようになったことで手軽に手に入る庶民的ペットとなり、金魚売りは夏の風物詩となりました。

で、金魚の養殖を手がけていたのが下級武士たちだったのです。

現在の台東区台東にあった下谷(したや)の御徒組の組屋敷は金魚の養殖で有名だったようです。ちなみに、御徒組の本来の役目は、将軍が外出する際の沿道警備です。

そんなイカツイ武士たちが可愛らしい金魚を熱心に育てていたのを想像するとちょっと微笑ましいですね。

金魚と美女は鉄板の組み合わせで浮世絵にも多数登場(喜多川歌麿 画)
金魚と美女は鉄板の組み合わせで浮世絵にも多数登場。この金魚も下級武士が内職で育てたものかも(喜多川歌麿 画)

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