虫歯を抜く前に頼ったのは歯医者さんではなく神様
虫歯の痛みは耐え難いもの。
前述したように江戸時代にも口中医という歯医者さんがいましたが、治療を受けられるのは大名や裕福な商人などの一部セレブだけ。まぁ、治療といっても当時はまだ根本的治療法がないので痛みを軽くするという程度ではありましたが。
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では、歯の痛みに悩む庶民はどうしていたのでしょうか?
その方法をざっと紹介すると、次の通り。
- 漢方薬など売薬を服薬する。
- 民間療法の生薬を飲む。
- 病封じのおまじないをする。
- 痛いところに竹筒をあてて(もしくは梨の枝をくわえ)、その先端に灸をすえる。
- 大根の汁を痛くないほうの耳へ注ぐ(え?)。もしくは患部に塗る。
- もぐさの煙を鼻から吸って口から出す(え!?)
などなど。
現代人からみると「治療」とは程遠いものばかりですが、当時の人は真面目も真面目、大真面目に虫歯治療として行っていました。
また、神頼みも歯痛を和らげるためのポピュラーな手段でした。神社仏閣へお参りし、願掛けをしたり、おはらいをしてもらったり、虫歯封じのお札やお守りを買ったりして、人々は歯の痛みから救われようとしたのです。
これは虫歯に苦しむ人が奉納した絵馬。女の子が口にくわえているのは錨(いかり)です。錨が船を止めるように、歯が抜けないようにという願いが込められているんだとか。
歯に関係が深い神社仏閣は各地にありますが、東京都港区東新橋にある日比谷神社もそのひとつ。もともと現在の日比谷公園内にあり、江戸時代には海が近く、近隣で鯖がよく獲れたことから通称「鯖神社」とも。
江戸時代、虫歯に悩む人がこの神社によく訪れたそうなんですが、おもしろいのが虫歯治癒の願掛け方法。ある食材を断って神頼みするのですが、その食材というのがこれ。
鯖(サバ)です。
「鯖神社」だけに、鯖を断ってこの神社に願掛けすると虫歯が治るんだとか。幸運にも願いがかなった場合は、鯖を奉納する習わしがあったといわれます。じつにユニーク。