• 更新日:2017年8月18日
  • 公開日:2016年6月16日


どんどん『略画式』シリーズいってみましょう。

余分なものはいらない

『山水略画式』「三囲」(1800年、北尾政美 画)
『山水略画式』「三囲」(1800年)※蕙斎時代
隅田川の近く、三囲(みめぐり)を山水画風に描いた作品。三囲神社の鳥居が見えます。手前には隅田川の堤に係留された舟もありますね。それにしても、超シンプル。余白の美です。でも、寂しさよりむしろ懐かしさ、温かさを感じます。

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花の美しさそのままに

『草花略画式』「ゆり」「あさがお」(1813年、北尾政美 画)
『草花略画式』「ゆり」「あさがお」(1813年)※蕙斎時代
さきほどの風景画とはうってかわって華やかな作品。ゆりは力強く、あさがおはたおやかに。花それぞれの魅力があふれています。朝顔の青がとっても印象的です。

さらに、ゆるさナンバーワンの作品がずらりとそろった『蕙斎略画苑』(1808年)より。

癒し系の七福神

『蕙斎略画苑』にある七福神(1808年、北尾政美 画)
『蕙斎略画苑』にある七福神(1808年)
恵比寿さま、布袋さま、めっちゃいい笑顔。大黒さまは見方によってはなんだか泥棒みたいだ。毘沙門天の大杯をあおる姿を後ろのアングルから、というのがニクイです。弁天さまは……どれが弁天さま!?

いい湯だな~

『蕙斎略画苑』にある銭湯の様子(1808年、北尾政美 画)
『蕙斎略画苑』にある銭湯の様子(1808年)
男性客でにぎわう江戸時代の銭湯(湯屋)のようすですね。いや~、みなさん銭湯をエンジョイしているのが伝わってきます。かかとやムダ毛のお手入れをしている人、歌いながら洗っている人、いろんな人がいて見飽きません。手前のお客さんは番台に座る番頭(左下)に「おやじ、さっぱりしたぜ」とでも言っているみたい。

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怖さゼロ、ゆる~い地獄絵図

『蕙斎略画苑』にある地獄絵図(1808年、北尾政美 画)
『蕙斎略画苑』にある地獄絵図(1808年)
北尾政美のタッチによる脱力系地獄絵図。これを見せられて「悪いことすると地獄に落ちるぞ~」と脅されても効果なさそう。右上の血の池地獄に放り込まれた女性たちは、温泉にでもきたかのごとく談笑ムード。このゆるさ、200年前にあったんですねー。

「略画式の蕙斎」と言われてたのは伊達じゃありません。北斎のビシビシ五感を刺激するような作品もすばらしいですが、まったり楽しむなら『略画式』シリーズ、最高じゃないでしょうか。

前述しましたように、『略画式』シリーズは絵のお手本集です。そこで政美があえて筆を省略したのは、「描線に凝るのではなく略して描くことによって、対象物そのものの本質・精神を写すように描こう」としたためといわれています。単なる“ゆるカワ”ではなく、じつに深い。

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