今度のお話は、手、目、口、鼻たちが擬人化されて大暴れ
『人間一生胸算用』
山東京伝 作・画(1791年)
~あらすじ~
『心学早染艸(しんがくはやぞめぐさ)』の続編。冒頭、大人気キャラクターとなった善玉が「前作が好評だったのでスポンサーの勧めもあり続編出したよ!」と身も蓋もない挨拶から始まる。この善玉が作者の山東京伝を連れて冒険に繰り出します。
『心学早染艸(しんがくはやぞめぐさ)』の続編。冒頭、大人気キャラクターとなった善玉が「前作が好評だったのでスポンサーの勧めもあり続編出したよ!」と身も蓋もない挨拶から始まる。この善玉が作者の山東京伝を連れて冒険に繰り出します。
上の画像は、善玉と山東京伝が訪れた商売熱心でマジメ一直線な男の家。そして、あら不思議!2人は豆粒のように小さくなって男の体のなかへ。
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なんだか、映画『ミクロキッズ』みたいな展開です。そういえばドラえもんでも小さくなったのび太がしずかちゃんの体の中に入る話がありましたね。江戸時代にこんな発想があったことがビックリ。
さてマジメ男の体内に入ってみると、なんとそこは小さな国になっており、リーダー格の「心」に手綱を握られた体の各部位がいた!
左から「耳」「目」「鼻」。
左から「手」「足」「口」。
超シュール。ちなみに、着物の柄も「目」ならメガネ、「手」なら「テ」などそれぞれにちなんでいて芸が細かい。
そう、男がマジメなのは、「心」が「手」「足」などを完璧にコントロールしていたからだったのだ!
ある日、男がうなぎの蒲焼屋の前を通った時のこと。体内の小さな国ではこんなやりとりが。鼻「この匂い!がまんできないよ~」口「あー、蒲焼食べたいよ~」番頭の「気」もそそのかされ、リーダーの「心」にお伺いを立てる。
が、堅物な「心」は「ムダな出費だ。早く帰るぞ」と取り付く島もない。
「心」の圧政にうっぷんを溜めていた「目」や「口」たちはついにクーデターを起こし、「心」を追い出すと「気」をリーダーにまつりあげた。気が大きくなった「気」は一同を連れて吉原でドンチャン騒ぎ。
「目」は「いい女ばっかりで眼福、眼福」と喜び、「口」はおいしいお菓子をしこたま食べ、「鼻」は遊女たちの香りにうっとりし、「耳」はせっせと耳かきしたりと大満足。
その後、「手」と「足」が暴走しだし、マジメだった男は盗みまで働くように。見かねた作者・京伝(ずっと体内にいた)が「心」を探し出し、秘密アイテムを使って再び「心」がリーダーに復帰し秩序が戻る。
正気が戻った男は以前よりできた人間になり、ほっと一息。その拍子に京伝も体外に出て、すぐさまこの体験を本にした、というオチ。
内容は説教臭いですが、表現のしかたが今見ても斬新すぎます。少し前に擬人化が大ブームしましたが、その下地は江戸時代にあったんです。
もうひとつおまけに京伝作品。シュール具合ではナンバーワンかも。
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