捨てる神あれば拾う神あり。不用品を再利用する回収業者たち
現代では「ゴミ」として捨てられてしまうような物も江戸の人々はひと手間加えて再利用しました。続いては再利用を支えたさまざまな職業をご紹介。
紙くず買い&紙くず拾い
使用済みの紙や古い帳面、また古着やくず鉄なども買い集め古紙問屋に売る「紙くず買い」。道端に落ちている紙くずを拾い集め古紙問屋に売る「紙くず拾い」。古紙再生という、エコの王道を突き進む強力コンビ。
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回収された古紙は汚れ具合によって選別され、漉き返され再生紙として生まれ変わります。再生紙は安かったのでトイレットペーパー(落とし紙)として使われました。
古着屋
布が貴重だった江戸時代。古着屋は新品が買えない庶民にとって欠かせない存在。
江戸時代中期には3,000人を超える古着屋がいたとも。そのメッカは柳原堤(いまの秋葉原〜浅草橋あたりの神田川土手)。拡大してみると、古着屋が古着を売っています。
余談ですが、着物は徹底的に使い切られました。
着物、古着屋で売られる
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古着をさらに着まくる。
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ボロボロの古着は子ども用着物に仕立て直す。端切れは「端切れ屋」に売る
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さすがに駄目になった着物はオシメや雑巾に再生
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使いすぎたオシメや雑巾は燃やして灰に
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燃やした灰も再利用(!)
灰買い業者
江戸時代における灰は農業用肥料/洗剤/染料/アク抜き/傷薬として活躍したオールラウンダー。灰買い業者は長屋や商家などを回ってとにかく灰を買いまくった。そのスタミナはまさに底なし。
下肥(しもごえ)買い業者
江戸時代のトイレ事情でも紹介したように、排泄物は良質な肥料であり貴重な資源です。そのため、江戸近郊の農民などは近隣の人糞を買い取ったり、野菜と交換したりしました。
絵の右が、排泄物と大根を交換する行商人。ひどい臭いにもめげずに無限リサイクル・ループを描く脅威の合理主義っぷりは、エコ職人たちからも一目置かれた。
排泄物を肥料として野菜が育つ
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育った野菜と交換で排泄物を回収
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回収した排泄物を肥料として野菜が育つ
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育った野菜と(以下、略)
これ、ムダ一切なしの美しさ。
古傘買い業者
古くなった傘を下取りし、紙の張り替えや骨の削り直しをして新品同然に再生させる腕前は特筆に価する。
傘は江戸時代でも主要な雨具でした。。傘張りの仕事は時代劇ドラマなどでは浪人の内職の定番。ちなみに、はがした傘の紙も防水性があったため魚や味噌を包む包装紙などに、折れた骨は燃料として再利用するという徹底っぷり。
蝋燭(ろうそく)の流れ買い業者
蝋燭を燃やした時に溶けた蝋を買い集め、それを新しい蝋燭に鮮やかに生まれ変わらせるいぶし銀の再生屋。
絵は遊郭の一室。蝋燭の灯が赤々と燃えています。蝋燭は高級品だったため、蝋燭を使うのは武家や大店、料亭、遊郭など一部の人々で、庶民は魚油(ぎょゆ)を使うか、暗くなったら寝ました。
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