• 更新日:2022年4月3日
  • 公開日:2016年12月13日


大晦日名物!? 借金取りVS債務者の熾烈なバトル


商売とはちょっと違いますが、“借金取り”も年末のある意味、風物詩でした。

江戸時代、人々は「掛売り」いわゆる“ツケ”で買い物をすることが多く、支払いは盆と暮れの2季払いというのがスタンダードでした。とはいえ、「ない袖は振れぬ!」とツケを踏み倒されては商売あがったりなので、貧乏人はニコニコ現金払いが基本だったもよう。

そういうわけで、盆と暮れになると商人が“ツケ”をしている人の家に行き代金を回収するのですが、1年の最終日である大晦日は総決算日。

取り立てる方も取り立てられる方もまるで気合が違いました。

闇金ウシジマくん
闇金ウシジマくんより。
取立て屋と化した商人たちは紋付の提灯を手に、大晦日が終わってしまう午前6時頃(明け六つ)まで徹夜で取立てに奔走しました。ウシジマくんばりの過酷な取立てをする者もいたのか「債鬼(さいき)」なんて呼ばれていたとか。鬼じゃ〜、鬼がきよった〜。

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取り立てられる方も必死です。

真面目な者はちゃんと期日までにお金を用意したり、あちこちに頭を下げてお金を工面するなどしましたが、なかには仮病を使ったり、居留守を使ったり、一晩中トイレにこもってやり過ごすツワモノもいました。

大晦日の借金攻防戦は年末名物のようなもので、落語や川柳、小説の恰好の題材となりました。

「大晦日 首でも取って くる気なり」

金払えねぇんなら、首おいてけ! 借金取りの気合と覚悟がビシビシ伝わります。

対して、取り立てられる側のキモチを詠んだ川柳。

「大晦日 よくまわるは 口ばかり」

金欠でクビはまわらないけど、言い訳をする口はペラペラとよくまわる、というわけ。いるよね〜こういうヤツ。

井原西鶴の『世間胸算用』(1692年)は大晦日の町人たちの悲喜こもごもを描いた娯楽本ですが、そこにも借金を踏み倒そうと知恵をしぼる男が登場します。

借金を踏み倒そうとする男(『世間胸算用』井原西鶴 作)
画像中央、モロ肌ぬぎになっているのが借金をしている男。男は取立てに来た商人たちに「俺に返す金はない!だからもう今から死ぬんだ!!」と自殺をほのめかします。もちろんブラフです。悪質です。

でもこれが功を奏し「いやぁ、死んじゃいかんよ」と借金取りたちはあきらめて帰ります。でも、取立てに来た材木屋の丁稚だけは「嘘の匂いがする」と男の作戦を見破りやり込めます。画像はまさに丁稚にやり込められているところです。

とまぁ、こんな感じの傍目にはとってもおもしろい攻防戦が大晦日が来るごとに行われていたのです。

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