あの有名人たちも虫歯に悩まされていた
虫歯の痛みに貴賤の区別はなく、有名・無名も問いません。江戸時代の偉人・有名人のなかにも虫歯に悩まされた人がたくさんいました。
たとえば、
『奥のほそ道』で知られる俳聖・松尾芭蕉です。「古池や蛙(かわず)飛び込む水の音」など超有名な句をたくさん残しています。
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そんな芭蕉が加齢とともに弱る歯を詠んだ句がこちら。
衰ひや 歯に喰ひあてし 海苔の砂
~松尾芭蕉~
~松尾芭蕉~
当時は板海苔を作る時に砂が混じることがあったのでしょう。そんな海苔に混じった砂も歯が丈夫なときにはぜんぜん気にならなかった。しかし、老い(といっても48歳の時の句ですが)とともに弱る歯にはこたえたようです。
そんな芭蕉の高弟にしてパトロンでもあった杉山杉風(さんぷう)も歯を患っていたようで、こんな一句。
がつくりと ぬけそむる歯や 秋の風
~杉山杉風~
~杉山杉風~
44歳の時の句なのですが、がっくりと歯が抜け始めたと嘆いています。「がっくり」というところに悲しみを感じます。
ほかにも歯のトラブルに悩まされた人物が、この人。
「やせ蛙 負けるな一茶 これにあり」などの句でおなじみ江戸時代後期の俳人・小林一茶。
一茶もかなり歯が悪く歯周病を患っていたといわれ、49歳の時には歯がぜんぶ抜けてしまったとか。
そこで一句。
かくれ家や 歯のない口で 福は内
~小林一茶~
~小林一茶~
なんだが自虐的なにおいがします。
一茶が世を去ったのは64歳。とすると、15年間も歯のない生活をしていたんでしょうか。それとも入れ歯をしていたんでしょうか。いずれにせよ、歯周病って今も昔も恐ろしいです。
ほかにもこの方。
江戸時代文学を代表する大ベストセラー『南総里見八犬伝』で知られる作家・曲亭馬琴。
晩年、目を患っていたことはよく知られていますが、歯も悪かったようです。
馬琴は謹厳実直、真面目というイメージとはうらはらに若い頃から甘いものが大好きだったそうで、結果、虫歯がいっぱい……。50代で総入れ歯になったそうで、日記にも「今日は入れ歯を修理する」などと書き残しています。61歳の時にはぜんぶの歯が抜けてしまったんだとか。