待ち人は誰?
古びた桟橋に幽霊が悄然と腰掛けています。腰掛けている幽霊、というのも珍しい構図ですが、全体的になんとも侘しい雰囲気で、見ていると気が滅入るようです。
画像左から流れるように出ているのは人魂でしょうか。作者は幕末から明治時代にかけて活躍した絵師・柴田是真(しばたぜしん)です。
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浮かび上がる青白い顔に震え上がる
青白い顔、うつろな眼差し、髪を噛む口元からは恨み言が今にも聞えてきそうです。タイトルに「柳下」とありますが、柳が描かれているのは表装部分というのがユニーク。
生暖かい風に揺れる柳の枝がこの絵の恐ろしさを一層際立たせます。ちなみにこちらの幽霊画、数ある江戸時代の幽霊画のなかでも屈指の怖さと評判です。
作者は江戸時代中期の絵師・呉春(ごしゅん)とその弟子・松村景文(まつむらけいぶん)の2人、共作です。
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いるの?いないの?
行灯の光がもれる部屋に蚊帳がかけられ、そこに静かに幽霊が座っています。蚊帳のある部分では幽霊がはっきり見え、それ以外はぼんやり。
幽霊がいるのは蚊帳のこちら側なのか、向こう側なのか。そもそもこの幽霊はいるのか、いないのか……。見れば見るほど不可思議な心持になってくるようです。
作者は、幕末から明治にかけて活躍した江戸生まれの絵師・菊池容斎(きくちようさい)。
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来る、きっと来る
フッと消えた灯心から煙が立ち上り、すーっと現れたのは痩せさらばえた幽霊。
よく見ると左手を画面の縁にかけていて、今にも画面を通り抜けこちら側に出てきそう。『リング』の貞子を彷彿とさせる恐ろしい1枚です。
作者は江戸時代後期の絵師・谷文一(たにぶんいち)。江戸時代を代表する絵師・谷文晁(ぶんちょう)の愛弟子で、後継者として期待されたが32歳の若さで他界……。はかない文一の人生とあわせて見るとさらに物悲しい。
次。メチャクチャ怖いので要注意。
鬼気迫る血まみれの微笑み
どくどくと真っ赤な血がしたたる美女の生首を幽霊がガッシと掴んでいます。
幽霊というより怨霊といったほうがしっくり来るほど恨みに満ちた幽霊ですが、その顔がニンマリと満足気に微笑んでいるのが恐ろしい。しかも、口からは生々しく血がしたたっています。
よく見ると生首になった美女もうっすら微笑んでいて、恐ろしさ倍増。幕末に活躍し退廃的な美女を数多く描いた渓斎英泉(けいさいえいせん)ならではの迫力ある幽霊画です。
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