恐ろしい幽霊画が続いたのでちょっと小休憩。お次はユーモラスな幽霊画をどうぞ。
じゃ、また明日ね~
幽霊のコスプレか、というくらいオーソドックスな幽霊ファッション。頭に白い三角の布(天冠)もつけています。表情もあまり恨めしげではなく、「じゃ、またね~」とでも言っているかのように片手をあげています。
でも、場所は墓場のようですし、間違いなく幽霊です。作者は江戸時代の妖怪絵師として有名な鳥山石燕(とりやませきえん)。妖怪画集『画図百鬼夜行』は現代でも高い人気を集めています。
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巨大な幽霊がニッコリ
巨大な幽霊が現れて驚いた女性を描いた幽霊画ですが、ちっとも怖くありません。むしろ微笑ましい。
幽霊はニッコニコだし、女性も女性でリアクションがオーバーすぎるし。色味も明るくパステル調なのでお子様でも楽しめる幽霊画となっております。
このユニークな幽霊画の作者は、円山応挙の孫弟子にあたる京の絵師・矢野夜潮(やのやちょう)です。
もう1枚、あまり怖くないもの。
“おっかさん”的な幽霊
暗闇の中、枕元に現れたのは顔面が不気味に崩れた女性の幽霊。「四谷怪談」のお岩さんのようです。たしかに怖いのですが、着物の色のせいか、丸顔のせいか、なんだか子どもの寝顔を見に来た“おっかさん”のようにも見えます。
作者は、江戸時代中期から後期に上方で活躍した琳派の絵師・中村芳中(なかむらほうちゅう)。大らかでユーモアにあふれた作風は幽霊画でも健在のようです。
さぁ、一息ついたところで、今度はめちゃくちゃ怖い幽霊画をどんどんご紹介していきましょう。
何を考えているかわからない恐怖
三味線を抱えた瞽女(ごぜ)の幽霊が水面に浮かび上がっています。「瞽女」とは盲目の女性旅芸人で、近世まで全国各地にいました。
鶏のように筋張った細い首を伸ばし虚空を見つめる瞽女の幽霊、なにも写さない瞳は何を見ているのか何を考えているのかわからず、この絵を見る者に恐怖心を与えます。ちょっとアップにしてみましょう。
怖い…。あまり見ていると夢に見そうです。
なお、作者は3代歌川広重。『東海道五十三次』や『名所江戸百景』などで知られる初代広重の門人で、幕末から明治にかけて活躍しました。
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