• 更新日:2017年8月18日
  • 公開日:2016年3月29日


●午前7時頃(明け六つ半)●

起床の時間です。将軍は6時頃起床なので、御台所は1時間ほどのんびり眠っていられたようですね。女中に「お目覚めになってよろしゅうございます」と声をかけられてから、起きました。

裏を返せば、その声がけの前はたとえ目覚めていても寝床から出ることはありませんでした。御台所が起きると、女中が「ますますご機嫌よろしゅう」とあいさつをします。

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それを受け下っ端の女中が、「六つ半時お目覚め、おめでとうございます~」とお触れを出し、大奥各部屋に御台所の起床を知らせました。

「さぁさぁ、みんな、御台さまのお目覚めだよ! 働け、働け~」という感じでしょうか。それにしても、朝起きるたびに「おめでとう」と言われる生活、想像できませんね。でも悪い気はしないでしょうね。

御台所の1日は「おしまいどこ」と呼ばれるメイクルームから始まります。まず、御台所のお世話役である「御中臈(おちゅうろう)」の補助により、口をすすぎ、歯磨きをします。歯磨きには房楊枝(ふさようじ)という江戸時代版歯ブラシを使用しました。こんなかんじのもの。

房楊枝(江戸時代の歯ブラシ)
画像引用元:河内長野の四季
房楊枝は先端の房状になっている部分で歯を磨き、反対側の尖った部分では歯間そうじができ、平らになった柄の部分では舌そうじまでできる便利アイテムでした。

歯磨きの次は洗顔です。顔は糠袋という江戸時代版洗顔フォームで洗ってもらったそうです。糠袋っていうのはこういうもの。

江戸時代の糠袋を再現したもの
画像引用元:ポーラ文化研究所
袋のなかに糠が入っていて、これをぬるま湯に浸したあと軽くしぼり、肌の上をなでるようにやさしく洗いました。

顔を洗ったら「鉄漿(かね)つけ」、つまり、お歯黒をしました。

宮中の侍女がお歯黒をしているようす(『美立七曜星』「化粧の金」月岡芳年 画)
宮中の侍女がお歯黒をしているようす。鏡を見ながら真剣な顔つきです(『美立七曜星』「化粧の金」月岡芳年 画)
お歯黒は江戸時代の女性の化粧を代表するもので、既婚女性の象徴であります。黒は「何色にも染まらない不変の色」ということで、貞操を守る意味が込められていたとか。

温めた「お歯黒水(鉄漿水)」(さびた鉄屑を米のとぎ汁、酢、酒、茶に漬けたもの)に、五倍子粉(ふしのこ/ヌルデの木にできた虫こぶの粉末)を混ぜ、房楊枝で歯に塗りました。

何度も塗り重ねて艶のある美しい黒にしたそうですが、お歯黒水はとっても臭く、五倍子粉は渋かったそう……。なので、お歯黒を付けたあとは必ずうがいをしました。

武家の娘が嫁入り道具として持っていった蒔絵の装飾が美しい豪華なお歯黒道具
武家の娘が嫁入り道具として持っていった蒔絵の装飾が美しい豪華なお歯黒道具。御台所のものはさらに豪華だったでしょう。画像引用元:大手小町
歯を黒く染めたら、入浴タイム。将軍の入浴タイムは夕方でしたが、御台所は朝だったようです。ちなみに、将軍大奥に泊まる日は夕方にも入浴したそうです。

入浴といっても大奥の湯殿に湯船はなく、かけ湯だけです。御台所は座ったままで、お世話係の女中たちが糠袋で全身を洗ってくれました。

ちなみに、使う湯は、「御末(おすえ)」という力仕事もする一番下っ端の女中が外で沸かした湯を桶に入れて湯殿まで運んできて、水とブレンドしながら“いい湯加減”にしたらしい。まあ、いつの時代も下っ端が頑張ります。

『千代田之大奥』(揚洲周延 画)
(『千代田之大奥』揚洲周延 画)
こちらの絵は湯上りの御台所(画像中央)。「ふぅ~、さっぱりしたわ」というお顔しています。左にいる御中臈(おちゅうろう)は湯上りのお茶を差し出しています。右にいる女中は風を送っていますが、団扇(うちわ)が6枚セットされたまるで扇風機のようなものを使っています

ちなみに、湯上りの水気や汗は浴衣に吸わせたのですが、肌がサラリとなるまで何度も浴衣を着替え、一度使ったら女中に払い下げたとも。なんともぜいたくな話です。

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