「てやんでぇ!」でおなじみ“自称”江戸っ子
その後、さらに時代は下り寛政期(1789~1801)以降になりますと「本格の江戸っ子」に続いて新たなタイプの江戸っ子が登場してきます。それが「“自称”江戸っ子」です。その定義は……
- 寛政期以降に登場し、町人文化が花開いた文化文政期(1804~30)に台頭
- 数代前に地方から江戸にやってきた裏長屋の住人といった下層町人
- 自ら「江戸っ子」を称し、それをアピールして空いばり
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といったもの。文化文政期は町人文化が花開いた時期、庶民も浮世絵や川柳、行楽やグルメなど文化活動に参加するようになったので、「江戸っ子」を自負する気持ちが下層町人にまで広まったのだといわれています。
威勢のいい魚河岸で働く男たちや猛火に果敢に立ち向かう町火消などはその代表格みたいなものでみんなの憧れでした。
町火消は江戸っ子憧れの的。喧嘩っ早く、まさに「火事と喧嘩は江戸の花」を地でいきました。
「江戸っ子」を自称する庶民が台頭してからも「本格の江戸っ子」は存在していましたが、なにせ数が違います。
なので「てやんでいべらぼうめ!こちとら江戸っ子でぃ!」の“自称”江戸っ子が今に続く「江戸っ子」のイメージとして定着していったのです。
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「江戸っ子気質(かたぎ)」といわれる江戸っ子の性格ってどんなもの?
江戸っ子の性格をあらわす表現はいろんなものがあります。たとえば
「江戸っ子は宵越しの金は持たぬ」
これは有名ですね。同じようなものとして
「江戸っ子の生まれそこない金を貯め」
なんてのもあります。どちらも江戸っ子の金離れのよさ、気風(きっぷ)のよさを表現したものです。その日に稼いだ金はその日にパッと使ってしまう――というとなんとも剛毅ですが、じつは貯めるに貯められない理由もありました。
「火事と喧嘩は江戸の花」といわれるように、江戸は火事の多い町でした。さらに今のように銀行なんてありません。そのためコツコツ貯めて家にお金を置いておいても火事があればすべてパアになってしまうのです。また、日雇い労働者が多かったので貯金できるほど余裕がなかったのです。
中央に見えるのが「振売(ふりうり)」「棒手ふり(ぼてふり)」と呼ばれた行商人。店を構えずできる商売なので庶民の商売として人気がありました。
ほかに江戸っ子を表現したことばとして
「江戸っ子は五月の鯉の吹流し」
というのもあります。「五月の鯉の吹流し」というのは「こどもの日の鯉のぼり」のことです。鯉のぼりはご存知のように中身は空っぽ。これを江戸っ子にたとえて「江戸っ子は威勢よくモノを言うけれど、腹にはなにもなく気持ちがさっぱりしている」という意味になります。
ほかにも江戸っ子の性格・特徴をあげますとこんな感じ。
- 見栄っ張り
- 短気で喧嘩っ早い
- 意地っ張り
- 義理人情にあつく涙もろい
- 正義感が強い
- 新しいもの、初物に目がない
- 清潔感を大切にし、意外とおしゃれにこだわる
- 早口
- ダジャレが好き
近くにこんな人がいたら楽しそうですが、正直、ちょっぴりめんどくさそうでもあります。